マンホール

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彼女はマンホールの上で跳ねていた。 とっても幸せそうな顔をして、 なぜか「九、九、九…」と言っている。 「何してるの?」尋ねてみた。 しかし、彼女は返事をせずに「九、九、九…」といいながら跳ねている。 「無視してんじゃないよ」今度は口調を強めて言った。 しかし、彼女は返事をしないで、相変わらず同じことを続けている。   今まで、特別に彼女を憎らしく思っていなかったが、嬉しそうに、 しかも自分を無視したことで、何か急にとてつもなく強い感情が湧き起こってきた。 しかし、それを抑え込んで、 「なんで、そんなことしてんのよ?」 もう一度尋ねた。 それでも、彼女は何も聞こえないみたいに嬉しそうに跳ねている。   ここにきて、マユミちゃんの中で今までと違った感情が生まれた。 ひょっとしたら『マンホールの上で数字を言いながら跳ねる』ということは とっても楽しいことではないのか、そんなことを思った。 バカらしいとは考えつつも、微かにそんな思いが頭の中をよぎった。 複雑な思いに戸惑いを感じながらも、 とにかくマンホールの上で楽しそうに跳ねる彼女の邪魔をしたくなった。
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