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思わず声を出しそうになって、体が仰け反った。
全ての地蔵の視線が俺に向いているような錯覚に襲われるが、違った。
同じ方向を向いてはいるが、俺じゃない。
そおっ…と地蔵達が向いている方向を確認すると、そこには小屋を支える大きな梁があり、人一人くらい裕にぶら下げることが出来るであろう頑強さに、そこに何があったのかを容易に想像する事ができた。
そう、彼女はここで……
酔いと悪寒で吐き気が込み上げ、口元を抑える俺の耳に、小さく……しかしハッキリとした声で、
「おかあさん?」
という声が聞こえてきた。
思わず振り向くと、小屋の入り口に見える小さな影。忘れもしない小学校の同級生だった――
―― O君 ――
まん丸の目を、キュッと音がしそうなほどハッキリと歪め、次の瞬間に何が起ころうとしているのかを瞬時に理解した俺は、絶叫が響き渡る竹林を耳を塞いで転げるように逃げ出していた。
どうやって抜け出したのか、あれが現実だったのかはもうわからないが、ゲェゲェと吐きながら、いつもの家路を不確かな足取りで帰ったのは覚えている。
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