夏の終わりに

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『どうしてよ!』 君は泣いていた。 ーー 明日から夏休み。だけど僕はこの夏休みが嬉しくない。 なぜなら2学期が始まれば君の姿はないのだから。 転校ってやつだ。 窓際に座る君を見ながら考える。夏が終わらなければいいのに……。 ーー 『おい!聞いてんのかよ?』 『え?あぁゴメン……』 僕は仰向けでプールを漂っている。 『今夜のお祭。行くだろ?』 『あぁ……多分』と友人の問いに、僕は曖昧な返事をした。 『はぁ?彼女に会える最後の……』 その後、友人が何を喋っていたのか覚えていない。 僕だって行きたい。でも……行けば全部終ってしまう気がするんだ。 僕はプールを漂っている。 ーー お祭も終わりが近付き打ち上げ花火が上がるのを見ている。 結局、僕は来ている。 君に会いたくて。 照らし出される君の横顔はとても綺麗だ。 花火の音に隠して僕は想いを伝えた。 『ずっと好きだった』 すると君は振向き僕を睨んだ。 『どうしてよ!なんで今さら……』 君は泣いていた。 花火が終わり暗闇が僕達を包み込む。 暗闇の中、一瞬だけ君の涙と唇を感じた。 次の瞬間、走り去る君の後ろ姿が映る。 そして夏が終った。
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