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魔神カルサクアに対してほぼ10メートル地点、始めにいた場所で足を止めた。
(こえぇ~)
改めて見ても、その威圧的な存在感は恐怖を駆り立てる。
これには馴れとかは有り得ないだろう。
根源的な恐怖。
陸でライオンに襲われる。
海でジョーズに襲われる。
捕食者と捕獲される贄。
ヒエラルキーの上の存在。
動物は自分を狙う外敵を本能でかぎ分ける。
その感情が勝手に沸き上がってくる。
全身に冷汗が出てくるが、気にしている場合では無い。
まさか、目の前に立つだけで心理的ダメージを受けるとは夢にも思わなかった。
震える膝を叩いて止める。
深呼吸。
《二つ目の願いを言うがいい》
突然の魔神の声に心臓が止まる。ビクリと体が硬直。
沈黙。
「……」
《……》
蒼白になる俺。
「……」
《人間は呼吸を止められる種族だったか?》
蒼白になったのは呼吸を止めてしまったからだ。
魔神のツッコミのおかげで、深呼吸途中、息を止めてしまっていた事に体が気付く。
我ながら情けない。
ゼエゼエーと呼吸をする。軽い先制パンチを先に喰らうとは。
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