1stネゴシエーション  交渉相手は赤褐魔神

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魔神カルサクアに対してほぼ10メートル地点、始めにいた場所で足を止めた。 (こえぇ~) 改めて見ても、その威圧的な存在感は恐怖を駆り立てる。 これには馴れとかは有り得ないだろう。 根源的な恐怖。 陸でライオンに襲われる。 海でジョーズに襲われる。 捕食者と捕獲される贄。 ヒエラルキーの上の存在。 動物は自分を狙う外敵を本能でかぎ分ける。 その感情が勝手に沸き上がってくる。 全身に冷汗が出てくるが、気にしている場合では無い。 まさか、目の前に立つだけで心理的ダメージを受けるとは夢にも思わなかった。 震える膝を叩いて止める。 深呼吸。 《二つ目の願いを言うがいい》 突然の魔神の声に心臓が止まる。ビクリと体が硬直。 沈黙。 「……」 《……》 蒼白になる俺。 「……」 《人間は呼吸を止められる種族だったか?》 蒼白になったのは呼吸を止めてしまったからだ。 魔神のツッコミのおかげで、深呼吸途中、息を止めてしまっていた事に体が気付く。 我ながら情けない。 ゼエゼエーと呼吸をする。軽い先制パンチを先に喰らうとは。
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