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◆◇ ◆◇
【???】
「アンス」
“彼”はその声を聞き、寝転がったまま瞼を開け、瞳を晒した。
まるで虹色のような……見る角度によっては七色に輝る不思議な翠眼、とても生まれもった者が持つような輝(いろ)ではない、そんな瞳
それが二つ、同じタイミングで開くと、瞳はゆっくりと声がした方へ向かう。
それに連なるように、色素が抜けに抜けまくったような白髪、ウルフカットでワイルドに切り揃えられた髪もまた揺れる。
「……いい加減、その名前変えたらどうなんだ?」
“彼”は声の主を捉えると、少し呆れたように呟く
“彼”のとは少し違う銀色混じりの白髪、短くもなく長くもない、前と後ろでザラつきが違う。
瞳は血のような、もしくはルビーのような赤い瞳――力強い意思を感じさせる赤い瞳
端正な顔つきは人間でいう若い男のソレ、両頬には何やら赤い紋様がある。
服装は――何と言えば良いのだろうか、SF半分ファンタジー半分……ああ、そうだ。まるでゲーム、そうゲームに出てきそうなキャラクターが着る服装、それが声の主の服装だった。
「いや、もう随分経ったんだから慣れたんじゃね?それに、名前、無いんだから仕方ないだろ?」
今度は声の主が呆れたように呟く
「だがな、お前が言う“アンス”は俺であっても俺じゃ……いや、もういい、とにかく何か用事なんだろうハセヲ?」
ハセヲ、と呼ばれた青年は懐に手をやり何かを取り出したかと思うとそれを彼に向けて放り投げた。
「……アイツからか」
放り投げたソレは折りたたみ式の良く見るケータイ電話であるようだ。
ハセヲよりアンスと呼ばれた“彼”はケータイの画面を見やる。
見るとメール一件が表示されている模様
「……第6に向かい、特定介入……対象、は……あん?」
「どうした?」
いきなりすっとんきょうな声を出した“彼”を見てハセヲは何かケータイの画面に妙な事でも書いてあったかなと思い出すが、格段何も無かった筈だと思い出す。
妙に長かったらしい名前っぽいのがあった気はするが……
「……あのあーぱーを、かよ……やれやれ、面倒なもんだぜ」
「(あーぱー?)」
なんだそれは?と言いたげなハセヲだが、それよりも早く“彼”はケータイをハセヲに投げ返した為、慌ててハセヲはケータイをキャッチした時には既に立ち上がっていた。
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