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髪の毛はヘアメイクされ、軽く盛って巻いてある。
いつもより濃い化粧、借り物のドレスとハイヒール。
衣装に着られているようで、なんだか場違いに感じた。
関口と言うお客さんは、にこにことこちらが何かを言うのを待っている。
何か言わなきゃ…
教わった事を頭の中で思い返し、名刺をまず渡すように言われた事を思い出す。
「えっと、鈴華です!よろしくお願いします」
ポーチから店から作って貰った名刺を取り出す。
可愛らしいピンクの柄に『藤本鈴華』と書かれている。
苗字も、名前と同じくらい簡単に決められたものだ。
両手でつまんで、関口さんに差し出した。
「鈴華ちゃん、今日始めてかな?」
関口さんは名刺をすっと押し返して言った。
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