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「鈴華ステイション、鈴華ステイション」
茶髪に細身のスーツをまとった男がマイクで言った。
くぐもった声で早口だから聞き取りづらいが、名前だけはなんとか聞き取れた。
ちょこちょこと、その男のところへ行く。
「鈴華ちゃん、ツバサさんのお客さんで、関口さんって人につくからね」
軽い笑顔で男は囁いた。
面接をした人で、確か石田と名乗った。
名刺には店長と書いてあったから、多分店で1番偉いのだろう。
ホールの見渡せる位置に立ち、マイクで名前を呼んで女の子を回すようだ。
ラッキーとか、付け回しと呼ばれていた。
「関口さんは常連さんでいい人だから、気楽に行っておいで」
石田は微笑むと、軽く背中を押した。
角に男性がゆったりと腰かけていて、隣に座っていた女の子が挨拶をして席を立った。
「失礼しまーす、鈴華さんでーす!」
石田は左手で私を促した。
「はじめまして、鈴華です」
緊張して震える声で、私は言った。
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