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ただのクラスメートの存在がわたしの中で大きくなってしまったのは高校に入学してから一月位たった頃。
わたし、望月綾美(もちづきあやみ)は調理部に所属しているどこにでもいるような女の子。趣味はお菓子を作ったりお裁縫をする事位で成績とか容姿とか至って普通。
寧ろ普通過ぎてわたしはつまらない女なんだろうな、なんて思ってたりしてる時だった。
『あれ…まだ体育館の電気ついてる‥?』
調理部の片付けを手伝っててすっかり日が暮れてしまっていたあの日。わたしは好奇心でつい体育館の方へと歩いてしまった。
『わたし甘ったるい匂いとかしてないかなぁ…』
その日わたしが部活で作ったのがマドレーヌ。だけど他の部員の子達がケーキとかプリンとかとにかく好きなお菓子とかいっぱい作ってたからその時の匂いがもし制服についてたらちょっと恥ずかしい。わたしは荷物を持ったまま制服に鼻を擦らせた。
―――大丈夫、匂いはしない…はず。鼻があの空気に慣れてしまったせいか自分じゃ解らない。
とにかく体育館の入口に着いてこっそりと扉を開けて覗いてみるとバスケットボールが沢山入った篭が見えた。でもそれと同時にガンッ!と大きな音がしてわたしは思わず目を背けてしまった。
恐る恐るもう一度覗いてみるとわたしのいる位置から少し離れたゴールに向かってボールを投げてる男の子がいた。
さらさらの髪の間から覗かせる顔が凄く凛々しくてつい、見とれてしまった。
(か‥カッコいい…誰だろ?先輩かな、それとも同学年?)
でも目を凝らして見てみるとそれは同じクラスの無口・無愛想・冷血人間と噂の男の子───相沢優弥(あいざわゆうや)君だった。
(ウソ…相沢君ってバスケ部だったの?不良じゃなかったんだ‥)
相沢君は身長190cm位のクラス一背の高い男の子。さらさらの黒髪にきりっとした顔立ちは“和”の雰囲気が出てて一見爽やかな美男子。
でも誰とも会話しない上に興味本位で声を掛ける女子とかを威圧したりよく授業をサボったりする所から皆からヤンキーだとか不良だとか言われてた。
学校での生活を“近付くな”ってオーラをずっと出して過ごしてる。
そんな様子が気になってわたしは暇さえあればずっと相沢君を見てた。
だからこの時も教室でのギャップの違いに凄く驚いた。
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