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菊は闇に包まれつつある林の中で、途方にくれていた。
「どうしましょう…もうすぐ日が暮れてしまうというのに、この脚では…」
菊は不案内なこの地で散々道に迷ったあげく、焦りのあまり道を踏み外し、低いとは言えない高さを滑り落ち、脚を引きずるはめになっていた。
「この痛みだと…ひびが入っていそうですね…」
自分の情けなさに溜め息が漏れる。
「どこか泊まれる場所を探さなくては…」
痛む脚を引きずりつつ、完全に日が落ちる前になんとかしなければと、できる限りの速さで歩いていると、ふと、木々が途切れた。
見ると、目の前には古い立派な洋館、
いや、規模的には城と言った方が正しいかもしれないが。
「こんな林の奥深くに…」
菊は思わず呟いたが、ここに泊めてもらえるかもしれないという希望に、躊躇わずにその城の大きな門へ手を伸ばした。
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