“ 黒い蝶 "

2/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
夜空を黒い蝶が舞っていた。 ひらり、ひらりと舞っていた。 黒い蝶はまた、ひらりと舞い上がり、夜空へ溶け込んでいった。 黒い蝶は知っている。 人の気持ちを知っている。 黒い蝶が舞う度に、1人の人間の気持ちを吸い上げた。 疑心、不安、不満、妬み…… それらを糧にして。 黒い蝶は舞う。 おびただしい数で…… 空を真っ黒に染めながら。 ずっと夜空が広がっている。 朝日が昇ることのない、この世界で…… 永遠の夜が続く、この街で。 黒い蝶しか知らない、この世界で…… 人間はなんて、醜いのだろう。 この黒い蝶はなんて、美しいのだろう。 夜しかない、この世界で……。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!