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夜空を黒い蝶が舞っていた。
ひらり、ひらりと舞っていた。
黒い蝶はまた、ひらりと舞い上がり、夜空へ溶け込んでいった。
黒い蝶は知っている。
人の気持ちを知っている。
黒い蝶が舞う度に、1人の人間の気持ちを吸い上げた。
疑心、不安、不満、妬み……
それらを糧にして。
黒い蝶は舞う。
おびただしい数で……
空を真っ黒に染めながら。
ずっと夜空が広がっている。
朝日が昇ることのない、この世界で……
永遠の夜が続く、この街で。
黒い蝶しか知らない、この世界で……
人間はなんて、醜いのだろう。
この黒い蝶はなんて、美しいのだろう。
夜しかない、この世界で……。
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