8.父の死

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高層ビルに高級アパート、世界の著名人が優雅な生活を営むマンハッタンの裏の顔。 スラム街の娼婦の溜まり場に僕達はやってきた。 あどけない顔をした女の子も、皺だらけの老女も、皆、唇を真っ赤なルージュで染めている。 ケンはやる気まんまんで、道で客引きをする女達を見定めているけれど、僕は何も感じない。 「なんだよ、仕方のない奴だな~」 ケンはそう言うと、近くにいた女に僕を引き渡した。 「おねえさん、こいつにいいとこ見せてやってよ!」 「なに、テディボーイなの?」 赤いソバージュを肩まで垂らした女は僕を面白そうに見た。 年は30くらいだろうか。 この女の口紅はところどころはげていて、今日こなした男の数を象徴しているようだった。 「よろしくな!」 ケンはチップを彼女の胸の谷間に押し込むと、近くの建物の中に消えていった。 「友達想いのいい奴だね~。惚れちゃうよ!」 女はケンの背中を見ながら大声を張り上げて、そして僕に言った。 「外だと80ドル、中だと……」 彼女はケンの入った建物を指差した。 「150ドル。どうする?」 「外で」 「じゃ、こっちで」 どうでもよさそうに呟く僕を、女は近くの路地裏に導いた。 「前金だよ」 金を握らせた途端、彼女はそのまま僕の首にぶら下がってキスをしてきた。 最初は無反応だった僕も、彼女の巧みな舌の動きに何かそんな気分になってきた。 「テディの癖に上手じゃない。あそこがムズムズしてきたわ」 彼女が官能的な声で囁く。 それに誘われるように彼女のブラウスをまくり上げると、豊満な胸を強く揉みあげた。
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