姫君と盗賊(雲骸)

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  「石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじ、かな」 「…誰の、ですか?」 首をひねる骸に、お返しと言ってはなんだけど得意げな笑みを返す。 「天下の大盗賊、石川五右衛門だよ」 僕は盗人じゃありません!と何かこだわりでもあるのかぷんすか怒る骸が子供っぽくて苦笑する。 「…骸は大変な泥棒だと思うけどね」 小さな呟きは、骸に届いただろうか。       あの日、 君が盗んだ心臓は今も僕の胸にぽっかり穴を空けているんだよ
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