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僕以外に殴られてはいや
ばきん、と嫌な音がした。
口の端から血が滑った。
顔が、殴られた直後だというのにぶっくり無残に膨れ上がっていた。
ごほごほ咳き込んだ拍子に血塗れた歯が一本、吐き出されて床に転がって僕の足にぶつかり止まった。
まるで鏡を見ているようだと骸は思った。だって、普段、血を流して歯を折られて惨めに顔を腫らしているべき自分は、今鏡のこっち側で其れを見ている。
殴られたのは雲雀だったからだ。
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