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僕以外の誰かに、
殴られた雲雀くん。
汚い。
僕以外の誰かが、
雲雀くんに触れたなんて。
気持ち悪い。
…触りたくない。
僕は潔癖?いや違う。
気がついたら骸はまた雲雀を殴りつけていた。
一瞬雲雀が怯んだすきに腹に一発叩き込んで、そのまま脇腹を蹴り飛ばした。
雲雀はそのまま玄関ドアに叩きつけられて、その後骸が頭を殴ったところで動かなくなった。
力の加減をしないで、殴りつけたものだから気絶してしまったようだ。
反抗も反論もさせる暇なく、雲雀を気絶させてしまった。これは、普段の骸と雲雀からしたらまるきり立場が逆のことだ。
自分が何をしたのかいまいちつかみきれない骸が慌ててぐったりした雲雀を抱き起こすと左手に水の感触がした。
恐る恐る見ると、紅。
ドアに叩きつけられて頭から出血したようだ。
綺麗。
なんて綺麗なんでしょう。
僕に殴られ血を流す雲雀くん。
なんだかやっと綺麗になった気がする。
やっと雲雀くんに触れる。
一度にっこりと笑った後。
「おかえりなさい雲雀くん」
骸は動かない雲雀の唇にキスをして、口の端の血をぺろりと舐めてあげた。
自分より身長の低い恋人をひょいと抱き上げて、包帯や氷のあるリビングへ運ぼうとすると足の裏で固い何かを踏んでしまった。
それは先刻折れた雲雀の歯だった。
少し考えた後骸は片手で其れを拾って、口の中に放り込み、そのまま其れをこくりと呑んだ。
そして何事もなかったかのように雲雀とリビングへと向かった。
僕以外に殴られてはいや。
君を傷つけた事実を持っているのは僕一人でいい。
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