甘い匂い

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ふいにユキオが 小さくうめいてから むっくり起き上がった 「あたまいてーい」 ベッドに腰かけて 煙草に火をつける 少し険しい顔をして 煙をもわんと吐き出す やわらかな栗色の髪 琥珀のような色の瞳 形のよい鼻‥くちびる‥ カーテンからもれる光が きらきら揺れながら ユキオに降り注いで わたしはその美しさに うっとりと手を伸ばす 「お前さーやせたよね」 唐突な問いかけは 聞こえないふりをして ユキオの生えかけたヒゲを そっと触りながら目を閉じた こんなとろとろした あまいきもちは何色? どんな形に描こう? 重なる淡い色に 濃い光の短い点線が 降り注ぐのが見えた 「食ってねーの?」 ユキオがわたしの手首を つかんで持ち上げる 「おもちゃみてぇ」 わたしは目を開けて ユキオを見つめた `
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