甘い匂い

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「おもちゃみてぇ」 出会った時にも ユキオはそう言った ライブハウスで開催された 陽気にぶっとんだイベントの夜 踊り続ける人達を横目に いまいち乗り切れないまま ゆらんと機材に寄りかかって 煙を吐き続けるわたしの隣に 並んでしゃがんできたユキオ 「お前、かわいいね おもちゃみてぇ」 ユキオは綺麗だった 研ぎ澄まされた お手本のような骨格をしていて 長い足を折り曲げた膝の高さが 不思議な色気を放っていた さっきまで バンドの助っ人として ステージに立っていた 厳しい顔をした男とは 別人のような無防備な きらめく笑顔を向けてくる 自分のすぐそばに あまりにも端正な顔があることが ひどくシュールに感じられて 頭がぼうっと発熱した ,
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