甘い匂い

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「俺の部屋においで」 それが一番よい答えだと 言わんばかりの得意気な顔 「どして?いつ?」 「いまから」 「だめ インコ待ってるから」 「じゃ、俺が行く」 ふざけてるの? えっちしたいの? わたしはぼんやりと ユキオの顔をながめた ユキオの瞳は淡い茶色で 静かに透き通っていた この人の中には 湖がある、と思った 「さみしいの?」 「お前がね」 ユキオは わたしの手を握って 勢いよく立ち上がった 「かえろー」 楽しそうに笑うユキオに ぐいぐいと引っ張られながら 舌打ちする女の子達をすり抜け 蒸し暑いライブハウスの扉を開けた こうしてわたしは ユキオのものになったのだ ゚
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