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週1の楽しみ
ここはカフェ「Moon」
私は大学を卒業した後、運良く一流企業に就職出来た新人OLの村上 沙耶。
つまり、失敗も多かったりする……
約2ヵ月前、その日も私は仕事で書類に、ほんの少しミスをした。
些細なミスだったが、上司は真面目で頭の堅いオジサンだ。
当然の様に呼び出され、説教を頂き、私は落ち込んだ。
―はぁ…また、やっちゃったよ
退社後、道を歩きながら、私は溜息を吐いた。
ついでに周りに人が居ない事も手伝って、つい足を止め、大きな声で愚痴を叫んでしまって居たのだ。
それが、カフェ「Moon」の前だった。
私の大声が気になったのか、店の扉が開き店員さんが心配そうに尋ねて来る。
「あの、大丈夫…ですか? もし、良かったら家の店で休んで行きませんか?」
いきなり、優しい言葉を掛けられ、私は半ば唖然とした。
見ず知らずの人間に、優しい言葉を掛けてくれる。
しかも、初対面の相手にだ。
そんな人は今の時代、そうそう居ないだろう。
それが、カフェ「Moon」の店長、笹本 雅也さんだった。
その優しい言葉と笑顔に、私は有る意味、一目惚れした様な物だ。
そして、それが切っ掛けで、私は毎週金曜になると退社後は夕食を食べる為に通い詰める様になった。
会社で嫌な事が有っても、笹本さんの笑顔と彼の煎れてくれる一杯の甘いロイヤル・ミルクティーが、私の心を癒してくれる。
そんなこんなで通い詰める事2ヶ月余り。
今ではすっかり、常連客の1人として店長だけで無く、店員さんとも顔見知りになって居た。
仕事で疲れきった、私の唯一の楽しみが、このカフェに有る。
それは、私の中で育ち始めた笹本さんに対する甘い戀心も含まれて居た。
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