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「お嬢様。起きてください」
直ぐ横から聞こえた声に私は目を開けた。
カーテンの隙間から差す太陽の光が、まだはっきりとしない意識を無理矢理覚醒させ、霞む視界を鮮明にする。
「おはよう祐奈」
「おはようございます。美月お嬢様」
恐らく私を起こしたのは彼女だろう。
ダークブラウンの髪で、メイド服に身を包んだ可愛い部類に入るであろう女性。
彼女は高松 祐奈(たかまつ ゆうな)といって、私が小学生の時は遊び相手として、私が中学生になり、祐奈が大学を卒業すると同時に私の申し出で、私の専属メイドになった。
勿論、言うまでもなく優秀で、出来ないことは殆どない完璧な人間だ。
十年来の付き合いだから、祐奈には本当に感謝してるけど、どこか恥ずかしくてお礼の言葉を言ったことはない。
こんなとき、本当に可愛いげのない女だと、少し自分に嫌気がさす。
「美月お嬢様。早くお仕度をされたほうが」
「ええ。わかったわ。じゃあ先に食堂に行ってて」
「わかりました」
祐奈は私の言葉に一度頭を下げると、部屋を出ていった。
さてと、早く準備しないとね。
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