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「坊っちゃまはお優しいのですね…!こんな僕に、」
「あのさぁ、思ってたんだけど年下に『坊っちゃま』とか言われたくない」
「え、じゃあ何とお呼びすれば………?」
「睦月の好きに呼びなよ。タカ、とか」
「そんな畏れ多い!!では、高雅さま、と」
「仰々しいな」
「これが僕の限界です」
「分かったよ」
高雅は睦月の入れたダージリンティーに角砂糖を一粒入れると、睦月が持ってきたシフォンケーキにフォークを刺した。
「それはそうと、考えはあるのかい」
高雅の突然の問いに戸惑う睦月。
「あの、何がでしょうか……?」
控えめに聞いてみる。
「明日は健康診断だろう?メイドの」
「は!!?」
睦月は抱えていたお盆を思わず落としてしまった。
カランカラン、と虚しい音がする。
「あはは、知らなかったの?」
「今初めて知りました………!」
睦月は両手で頭を抱えてうずくまった。
「どうしよう!どうしよう!!お医者さんの目はさすがに誤魔化せない………!」
「分かんないよ」
「えっ………?」
「キミくらいの年齢なら胸が無くても不自然じゃないし、睦月なんか特にまだ幼児体型を抜けきってないし。女物の下着でもはいてればバレないんじゃない?」
「そうか……………って無理ありますよ!!!大体女物の下着なんてどこに………」
高雅はニヤリと笑った。
(あああ、嫌な予感がするよぅ………)
「叔母さんに頼んで用意してもらおう」
「…………(ガクッ…)」
坊っちゃまはとても楽しそうで生き生きしている。睦月がどれだけ大変な思いをしなければならないかも知らずに。
「バレないように頑張るんだよ、睦月」
「………はい……」
「僕以外にバレたらお仕置きだからね」
「えっ」
「だって僕の睦月だもの」
坊っちゃまはドSだったんでした!!
睦月はうなだれてその日の仕事をこなした。
夜、突然ドアが開いて驚いたらまた桜子がやってきて、睦月に女物の下着を渡した。
「かわいい甥に頼まれたんじゃ仕方ないわ。ほら、睦月。女の子用のパンツ。どれがいい?」
レース、水玉、チェック、うさぎさん……
「水玉で…」
睦月は水色の水玉の下着を受け取った。
「頑張ってね、睦月」
「はい………」
ああ、できることなら明日なんて来ないで欲しい…。
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