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睦月は検査が終わると高雅の部屋に向かった。
コンコン。
「開いてるよ」
「失礼します」
「やあ、女パンツの睦月。どうだった?」
「もぉ大変でしたよォ!!」
「あはは、そんな顔してる」
睦月は高雅の紅茶(今回はダージリン)を入れながらため息をついた。
「僕は男としてしてはならないことをしてしまった気がします」
「へえ。何があったの?」
「心臓のレントゲンを撮る時でした。みんな服を脱ぐんです。下着まで」
高雅は睦月に背を向けた。その肩は揺れている。
「高雅さま……これは真剣な話なんですよ!?」
「ぷっ……そうだったね」
「僕は四方八方ノーブラの女の人に囲まれて、気が気じゃありませんでした……」
「あっはっはっはっは!!」
睦月は紅茶をいれ終え、高雅に差し出す。高雅はそれにいつも通り角砂糖を1つだけ入れると、カップを持ち上げた。
「睦月は本当にかわいいな。男にしておくのがもったいないよ」
「誉め言葉ですか?」
「さあね」
「…………」
睦月はため息をついた。
「じゃあ僕、コックさんに頼まれてた仕事があるのでこれで。また後でカーテン閉めに来ますね」
「うん」
高雅はニッコリ笑って睦月に手を振った。
「えーっと、料理長が言うにはこの辺に………」
睦月は花壇の一角にしゃがみこんで花を眺めていた。
「うーん、どれのことだろう………」
「よォ、探しもんか?」
「わぁっ!?」
「そんなに驚かなくてもよ……」
睦月に声をかけたのはブルーのツナギ服を着た、屋敷の庭師だった。
「えっと、わ、私、柊睦月です!小6です!」
「なるほど、お前がウワサのメイドか。オレは馬場海月(ババミズキ)、高2だ」
「オレって………男の人?」
「違う違う。正真正銘の女。この屋敷で男が働けないのは知ってンだろ?」
「あ、はい」
睦月は頷いた。
「で?メイドが庭で何か探しもんか?」
海月は軍手を取りながら睦月に聞いた。
「は、はい!あの、料理長に食用のバラを摘んでくるように言われたんですけど、どれのことだか分かりますか?」
「あぁ、それならもっとこっちだぜ。これこれ」
海月は小さな赤いバラの花を指差した。
「わあっ!ありがとうございます!」
睦月は小さなかごに、その小さなバラをいくつか摘んで入れた。
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