小学生?大丈夫よ、うちでは小学生も雇うから。

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「こっちよ、睦月」 いつの間にか呼び捨てにされていることがちょっと嫌だったが、睦月は黙って桜子に着いていった。 大きな部屋に通される。 「ここは応接間。お客さんが来たときに通す部屋よ」 「へえ……」 「さっそくだけど、睦月。ハウスキーパーをする気はある?」 「その前に、僕がどうしてワンピースなんか着ているのか教えてください」 「…………」 桜子は足を組み、顎に指をやって考える素振りを見せた。 「睦月、この部屋に来るまでに何か気付かなかった?」 「へ?えーと、メイドさんがたくさんいるなぁって………」 「ズバリそれよ」 「?」 「うちのボスは男が嫌いなの」 「へ!?でも僕、」 「しっ!その先は言わないで。ワンピースを着せられた時点で気付いたでしょう。あなたは“女として”ここのハウスキーパー、つまりメイドになるのよ」 「えぇぇええっ!!?」 「柊睦月くんではなく、柊睦月ちゃんなの」 睦月は動揺しながらそわそわと辺りを見回す。 「ぼ、僕が男だってバレたら、」 「あたしはクビね。そしてあなたはセメントで固められて東京湾に沈められる」 「ひぃぃっ!!!」 「でも日給20万は必ず保障するわ。ただ、放課後友だちと遊んだりはできなくなってしまうけれど」 「それは……」 放課後友だちと遊ぶなんて、ほとんどしたことがない。たまに和幸に誘われて公園でサッカーをしたりするくらいだ。普段はほとんど宿題をしたり孤児院の小さい子たちの面倒をみたりしている。 「どうする?日給20万。ただし女装して労働条件もキツいわよ」 日給20万。 自分の元にある程度残しておけば、あとは孤児院に寄付できる。睦月が孤児院に寄付することでどれだけの子どもが楽になるだろうか。睦月はそれを知っていた。 「………僕、やります」 桜子はニヤリと笑う。 「言うと思ったわ。ただし、それ、禁止ね」 「?」 「“僕”」 「……! ええと、わ、私?」 「そう」 桜子はどこかホッとしたようにニッコリ笑った。 「じゃあ、着いてきて、睦月」 「はい」 二人は応接間を後にした。 「咲!ちょっと来て」 「はい」 掃除をしていた咲、と呼ばれた少女が箒を置いて桜子の元へやって来た。 「今日から入った柊睦月ちゃんよ。しばらく一緒に行動して、仕事を教えてあげて」
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