小学生?大丈夫よ、うちでは小学生も雇うから。

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「雅咲(ミヤビサキ)です。よろしくね、睦月ちゃん」 「よ、よろしくお願いします」 睦月はぎこちなく挨拶をした。 「睦月、咲はあなたの一つ上、つまり中学1年生よ。年も近いことだし、仲良くしなさい」 「は、はい!」 「じゃあ咲、あとは頼んだわ。あたしは仕事に戻らないと」 「分かりました。お任せください」 咲が桜子にペコリと挨拶をすると、桜子は満足そうに頷いて来た道を戻っていった。社長秘書、なんだから本当は忙しい人なんだろう。 「睦月ちゃん」 「! はい!」 「今まであたしが最年少メイドだったんだけど、これからは睦月ちゃんが最年少メイドだね。頑張ろうね」 「はい!」 咲は先ほどの箒を手にすると、どこかへ歩いて行く。睦月はそれに着いていった。 「まずはメイド服が必要だよね。睦月ちゃんはあたしとほとんど身長が変わらないから、きっと新しいのがあるはず」 咲は更衣室、と書かれた部屋のドアを開けた。その広い部屋に、4、5列になってズラリと並ぶロッカー。この屋敷ではこれだけの数のメイドが働いているんだ。睦月はこの部屋だけで迷子になりそうで、必死に咲の後を追った。 咲は部屋の隅に置いてある大きな段ボールの中から“Sサイズ”と書かれた箱を選び、蓋をあけた。中にはビニール袋に包まれたメイド服一式があった。 「はい、これが睦月ちゃんのメイド服。代えのメイド服と合わせて3着、あげるね」 「ありがとう、ございます」 「あはは、1つしか違わないんだからタメ口でいいよォー」 「う、うん、ありがとう」 咲はまた歩いて行く。 「で、ここが睦月ちゃんのロッカー。425番ね。覚えておいて」 「425番、425番…」 睦月は呟きながら、新品のメイド服をロッカーの中のハンガーに吊るし、1着を着ることにした。 「あ………」 着替えるところを見られたら、男だとバレるかもしれない。 「あっ、ごめんね、向こう向いてるね」 この場は咲の心遣いで助かったが、これから何度こんな場面があるか分からない。睦月は男の自分がメイドをやることの大変さをしみじみと実感した。 「着替え終わった、よ」 「どれどれ。うん、すっごく似合う!かわいいよ!」 (…………嬉しくないんですけど) 睦月は苦笑いをした。 「じゃあ、しばらくの間はあたしと同じ仕事しようね」 「うん」
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