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ホテルに緊張しながら入ると健司は慣れたように部屋を選んだ。
「前金」
「えっ?!」
「ホテル代だよ。ここ前金なんだ」
私に払えと言わんばかりの口調だ
今さっき私に告白して女になれと言った。
自分は必ずでかくなると…
なのに初めてのホテル…初めての思い出に残るエッチをするホテル代を何故か私に出させようとしている
「さっきガソリン入れて金ないんだよ。悪いけど金出して」
何故か私は断れなかった
どうしてだろう
ケチだと思われたくない自分がいたのかもしれない
ヤクザ映画で観た事がある
うだつの上がらない下っ端のチンピラを彼女が支え一人前の男にするのを
ヤクザと付き合うってこういう事なのかな…
幼く無知な私は安易にヤクザの世界に憧れいつかたくさんの男達が自分に頭を下げる光景を頭に描いていた
「いいよ。バイト代あるし私が払うから」
財布からお金を出しホテル代を払う
部屋に入ると健司は着ていた上着を脱いでソファーの上に投げた
私はそれを拾いハンガーにかけた
ズボンも脱いだまま床に放置
拾い上げシワにならないように掛ける
シャツを脱いだ健司の背中には彫りかけの入れ墨が入っていた。龍が4匹絡みあって天に向かって昇竜している
その龍の口には天下を意味するような水晶が口にくわえている
「その入れ墨…いつ完成するの?」
「だいたい一回行く度に2万かかるんだよ。
だからなかなか先に進まなくて…
こんな中途半端な墨じゃ恥ずかしくて人前で脱げないよな。お前にだから見せたけど本当は完成するまで誰にも見せたくなかったんだ」
「その背中に私の名前は入れてもらえないの?」
今思えばどうしてそんな事を言ってしまったんだろうと本当に後悔している
でもその時、私は一瞬でもう健司の虜になっていた
一生この男について行こうと…
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