きりたんぽ鍋

10/12
前へ
/12ページ
次へ
「真木沢、下の八幡まで」   「はづまんね……あいよ、了解」    タクシーのトランクを借りて、荷物を詰め込む。  後部座席のドアを開けてもらうと、瑛美子に合図をした。  瑛美子と芽吹は、走ってタクシーへと駆け寄ってきた。   「まったく、凄い雪ねぇ。芽吹、大丈夫?」   「うんっ、だいじょぶ」    あれほど雪を楽しみにしてたのに、今は雪が嫌いになってしまったようだった。  タクシーのドアの外で瑛美子は芽吹の雪を振り払うと、急いで乗り込んだ。  準備が整うと、タクシーはワイパーを全開にして走り出した。   「あらぁ? 良く見だら政夫じゃねぇべが?」   「えっ、そうですけど……」   「ほら、あれだ……かづおだ。上の」   「あーっ! もしかして、かっちゃん?」    突然声をかけられて一瞬戸惑ったけど、運転手の名札を見て納得した。  そういえば、横顔にどことなく面影があった。   「パパの、知り合い?」    後ろから、瑛美子が声をかけた。   「政夫どは、同級生だ。おめぇも、こんただめんこい嫁ど娘な連れで」   「こんただめんこい?」   「ママと芽吹は、可愛いっていう意味だよ」    そういうと、芽吹はありったけの笑顔を返した。  すると、運転席でまっちゃんが笑っていた。  なんだか、恥ずかしかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加