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「真木沢、下の八幡まで」
「はづまんね……あいよ、了解」
タクシーのトランクを借りて、荷物を詰め込む。
後部座席のドアを開けてもらうと、瑛美子に合図をした。
瑛美子と芽吹は、走ってタクシーへと駆け寄ってきた。
「まったく、凄い雪ねぇ。芽吹、大丈夫?」
「うんっ、だいじょぶ」
あれほど雪を楽しみにしてたのに、今は雪が嫌いになってしまったようだった。
タクシーのドアの外で瑛美子は芽吹の雪を振り払うと、急いで乗り込んだ。
準備が整うと、タクシーはワイパーを全開にして走り出した。
「あらぁ? 良く見だら政夫じゃねぇべが?」
「えっ、そうですけど……」
「ほら、あれだ……かづおだ。上の」
「あーっ! もしかして、かっちゃん?」
突然声をかけられて一瞬戸惑ったけど、運転手の名札を見て納得した。
そういえば、横顔にどことなく面影があった。
「パパの、知り合い?」
後ろから、瑛美子が声をかけた。
「政夫どは、同級生だ。おめぇも、こんただめんこい嫁ど娘な連れで」
「こんただめんこい?」
「ママと芽吹は、可愛いっていう意味だよ」
そういうと、芽吹はありったけの笑顔を返した。
すると、運転席でまっちゃんが笑っていた。
なんだか、恥ずかしかった。
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