0人が本棚に入れています
本棚に追加
タクシーを見送ってから気がついた。
雪が、やみかけていた。
「いいわね。友達って……」
「そうか? 懐かしかっただけかもしれないけどな」
「そうかしら?」
さっきまであれだけ雪が降っていたのに、道路から家まで綺麗に雪かきがされていた。
きっと今の今まで、親父がやっていたんだろう。
思わず、その姿を思い浮かべて笑った。
「パパ、パパ! いい匂いがするよーっ!」
「あら、ほんと。お父さん、きりたんぽ鍋用意してるって言ってたわね」
「ああ、そう言ってたな……」
その匂いは、あの時のきりたんぽ鍋と同じだった。
ばあちゃんが作ってくれた、鳥っこの出汁が効いたきりたんぽ鍋と。
おらは玄関の扉に手をかけ、勢い良く開けた。
そして、元気良く叫んだ。
「父ちゃん、ただいまー!」
(了)
最初のコメントを投稿しよう!