0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「んうぁー、さんびぃなぁ……ばあちゃん、ただいまー!」
吹雪は、嫌だ。
ばあちゃんが編んでくれた手袋だけど、あまりにもボロボロで穴だらけだったから、手が冷たくてしょうがなかった。
それに歩いている先がほとんど見えないから、道路脇の側溝さ落ちそうになった。
「あんや、政夫なば……こんた雪強ぇ日に、よぐ一人で帰って来れだなぁ」
「ばあちゃん、おらだってもう小四だべ? それくれぇ、できるべな」
玄関まで迎えに来てくれたばあちゃんさそっぽを向いて、おらは頭さついた雪を払い落とした。
父ちゃんがここいたら『雪は外で払ってから入れ!』と怒られるんだけど、ばあちゃんだけだったから楽でよかった。
でも思ったよりも雪が多かったので、玄関さ落ちた雪の多さに『ちょっと悪い事したかも……』と、思った。
「さびぃがったべ? こたつなぁ暖がくなってるから、早く入れ入れ」
「んだな。手ぇはっけぐなって、動かねぐなってだがら」
凍りつき始めていた手袋を取ると、玄関の脇さ投げた。
ばあちゃんはその手袋を『よっこらしょ』と拾うと、ぽんぽんと叩いてポッケさ突っ込んだ。
おらは靴を脱いで廊下さ上がると、凍るくらい冷たくなった床さなるべく足をつけないようにしようと、つま先立ちさなった。
「政夫、転ぶんじゃねど」
「わがってるって、ばあちゃん」
ばあちゃんは歩くのが遅かったから、その場で待っているわけにもいかなかったのと、足の冷たささ我慢できないのとで、こたつのある居間へと走った。
しもやけさなった手が、かゆくてしょうがなかった。
最初のコメントを投稿しよう!