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「ばあちゃんな、それまで政夫のごど待ってるがら」
「ばあちゃんがそう言うなら……そうする。おら、街さ行って戻ってくるがらな」
そう言うと、おらはきりたんぽを口の中さ入れた。
時間が経ってくると一層汁を吸い込んで、味が濃く、美味しくなっているみたいだった。
この生活は、変わらない。
おらが望む、一番の幸せがある生活なんだから。
最後まで残しておいた鳥ときりたんぽを、一気に食った。
あっちぃ鍋も美味しいけど、少し冷めたきりたんぽもまた、美味かった。
そっちの方が、一気にいっぱい食えるから。
「ばあちゃんな、そしたらまだきりたんぽ作ってけれな」
「わがった、わがった。その嫁さも、作ってやんねばならねぇがらな」
冬は、これからが本番だったから。
どこまでも降る雪さ、おらはわくわくしていた。
今年の雪は、どこまで降り積もるんだろうか。
どうせなら、今まで見たこともないくらい降り積もって、みんなでびっくりしてみたいんだ。
そうしたら、今年は去年よりも一杯でも多くのきりたんぽが食えるかもしれないから。
ばあちゃんも、父ちゃんも、おらも一緒に……この熱々のきりたんぽを食いたいんだから。
「ごっちょーさん!」
ばあちゃんも、おらも、笑顔だった。
この時間は、この空間は、この静けさは、ずっとずっと続いてるんだから。
「はい、ごっちょーさん」
赤い炎さ照らされて、頬が橙色に光りながら、おらは幸せだった。
夜は長いけど、この暖かさがあるなら。
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