595人が本棚に入れています
本棚に追加
意識がハッキリしてきた……
立ち上がり、辺りを確認する。
薄暗い曇り空。森のような所に何故か俺は寝そべっていた。
自分の名前。それ以外の情報は思い出せない。
記憶喪失ってやつだろう。
ただ、幸いに一般教養などは忘れていなかった。
そして何故か俺の右手には黒くずっしりとした重みを感じる。
銃……拳銃……。
普通に考えればおかしい。何故か解らないが手にしっくりくる。
バッと拳銃を構えてみる。
安全装置を外し、試しに木に向かい、拳銃を撃ってみる。
辺りに広がる発砲音、鼻をくすぐる硝煙の匂い。
普通に撃てた。普通なら反動にビックリしたり、音に驚いたりするだろう。
しかし俺は何も感じなかった。
当たり前のような感覚だった。
恐らく記憶を失う前は、警察か軍隊……もしくはマフィアかテロ組織にでも居たのだろう。
……後者でないことを祈ろう。
手に持つ拳銃を着ていたコートの裏にしまっておいた。
状況が状況である。持っていた方が安心だから。
もう一度よく辺りを観察してみる。霧が出ていて視界が悪い。
しかし、よく見ると森の奥の方に家がポツンと一つ建っているのがうっすらと確認できた。
ここに突っ立っていても何も分からない。あの家に行ってみよう。
何か分かるかも知れない……
最初のコメントを投稿しよう!