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「あの、すみません。なんかお世話になっちゃって。」
結局、押しの強い二人に説得?され、泊めてもらうことになった。
「べ、別に……、あ、あなたに風邪引かれちゃ私が悪いみたいになるし………」
「シャン!ハイ!」
何故か仕草が似ているがそこは気にしないでおこう。うん。
にしても
「アリスさんは優しいんですね。こんな見ず知らずの男を泊めてくれるなんて……」
「なっ! だから私は!!」
そう、俺には『あの人』位しか優しさというものを感じたことはなかったっけ……
ん?『あの人』って誰だ?まさか、記憶が?
…………駄目か。名前も顔も思い出せない。
けど………
何故か暖かい気持ちになる。
そうか、心が覚えてるのか。
『 』
何かを感じ取ったが現実に戻された。
「って、ちょっと! 聞いてた!?」
「……え? あ……ごめん。」
アリスさんは心底呆れた顔をし、ため息をついて俺に言った。
「で、名前教えてって言ったのよ。」
名前か。そうだ、自分のことで唯一覚えているのが名前だったよな。
えっと……確か……
「黎、黎って呼ばれてた。」
「そう、黎ね。よろしく。後、わ、私のことはア、アリスで結構だから……」
そう言うとアリスは顔を赤くしながらも手をスッと出してくれた。
俺はその手を握手し、一言言った。
「よろしく、アリス。」
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