一話 幻想郷

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「あの、すみません。なんかお世話になっちゃって。」 結局、押しの強い二人に説得?され、泊めてもらうことになった。 「べ、別に……、あ、あなたに風邪引かれちゃ私が悪いみたいになるし………」 「シャン!ハイ!」 何故か仕草が似ているがそこは気にしないでおこう。うん。 にしても 「アリスさんは優しいんですね。こんな見ず知らずの男を泊めてくれるなんて……」 「なっ! だから私は!!」 そう、俺には『あの人』位しか優しさというものを感じたことはなかったっけ…… ん?『あの人』って誰だ?まさか、記憶が? …………駄目か。名前も顔も思い出せない。 けど……… 何故か暖かい気持ちになる。 そうか、心が覚えてるのか。 『    』 何かを感じ取ったが現実に戻された。 「って、ちょっと! 聞いてた!?」 「……え? あ……ごめん。」 アリスさんは心底呆れた顔をし、ため息をついて俺に言った。 「で、名前教えてって言ったのよ。」 名前か。そうだ、自分のことで唯一覚えているのが名前だったよな。 えっと……確か…… 「黎、黎って呼ばれてた。」 「そう、黎ね。よろしく。後、わ、私のことはア、アリスで結構だから……」 そう言うとアリスは顔を赤くしながらも手をスッと出してくれた。 俺はその手を握手し、一言言った。 「よろしく、アリス。」
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