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目覚ましが突如けたたましく部屋の中に鳴り響く。
俺は意識が朦朧とした中、ベッドのすぐそばにある机に、布団の中からゆっくりと手を伸ばし、目覚まし時計のてっぺんを叩いた。目覚まし時計は中途半端な音を鳴らした後、途切れた。
カーテンの隙間から朝の陽光が部屋の中をほんのり明るくする。俺は眠気眼を擦りながら、目を細めて時計の針を布団から覗き込む。
「……九時か。まだまだいけるな。……んっ……九時?」
何度も目を擦りながら、いつもとは違う時計の針の位置を確かめる。しかし、その針は一ミリ単位とも動こうとしない。
生唾を飲み込んだ後に、焦燥感が胸中に押し寄せてくる。心臓が速くなるのも感じた。
「ヤバッ!遅刻!」
俺は慌てて布団から飛び上がり、ベッドから急いで降りて洗面所に向かい顔を洗う。荒い洗い方で何度か顔に水をかけた後、リビングに駆け足で降りる。
急いで駆け下りたため途中でつまずきそうになり、前につんのめりになる。お母さんもお父さんも既に仕事に行ったようで、朝食だけがテーブルに置かれていた。
朝食はご飯と味噌汁といういかにも手抜きな感じだった。俺はそれを無視して、乱雑に冷蔵庫を開け放つ。中から牛乳ビンを取り出し、カウンターに置かれた食パンを手にリビングに戻った。
テーブルに置いたものの、とりあえず二階に上がり、着替えを済まし再び一階に戻る。無駄な時間をかけていられなかった。
今日は大学のテストだった。
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