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遅刻をした主人公が、食パンをくわえながら走っていると、曲がり角で向かいから走って来た異性とぶつかる。
二人は正面からぶつかったため、その場に倒れ込む。鞄の中身が道端に散らばり、それに気付いて向かいから来た女の子は俯き謝りながら、それを拾い集める。
起き上がった主人公はふと彼女の顔を見る。すると何かが胸の中で弾けるかのように、爽やかなときめきが体中を支配する。
そう主人公は一目惚れをしたのだ。顔を赤らめ、お礼を言い、慌てて立ち去る彼女。そんな彼女に主人公は慌てて声を掛ける。
『待ってください!』
っと。
頭の中で流れる映像。毎朝こんなことが起これば良いのにと考えていた。そして、今日わざと遅刻をし、食パンをくわえ走っているのだ。
鼻からテストは諦めている。なぜか今日起こり得るというか、感覚が自然と反応する。身体はテストで一杯なはずだが、感覚が何かを待ち望んでいる。
見通しの悪い曲がり角が見えて来た。毎朝通るお馴染みの場所。俺は息を切らし、高鳴る鼓動を抑えながら、無我夢中で走る。無我夢中のはずだが、何かを望んでいるのは変わりない。
曲がり角の手前で、何かが頭上から降ってきた。それは鋭利な物体で速く、俺の首に目掛けて落ちてくる。
正面には女性がいた。顔はよく見えない。降り下ろされた物体は、俺の首元と胴体を切り離す。目の前に自分の血が飛び散る。
何が起こったか判然としないまま、俺は地面に転がり、そばにある自分の胴体を冷静に見つめていた。
徐々に意識が遠退いていく。女性がかがみ込み、俺の目の前で笑った。それが俺の見た最後の光景だった。
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