「コノ世」と「ワタシ」

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地下鉄が着くのを待っている時、 信号が変わるのを待っている時、 階段を降りている時、 ……思うことがある。 この一歩を踏み出してしまえば、「コノ世」とおさらば出来るのでは、と。 結局、その一歩を踏み出さずに終わるのは、そうしてしまったら悲しむ人がいるからだ、と考える。 …でも、それって偽善。 そうしたいのは「ワタシ」なんだから、他人のことまで考えるのは変。 じゃあ…死なずに終わって、一生車椅子になってしまうからだ、と考える。 こっちの方が正直。 でも、ちょっと理由が弱い。 おさらばすることを本気で考える人っていうのは、もし死ななかったらどうしようなんて考えないから。 それなら…きっと、死ぬのが怖いから。 多分、そう。 もちろん、人を悲しませたくないし、死ななかったら「イヤだな」、とは思うけど、一歩を踏み出せないのは怖いからだろうね。 それを認めちゃうと、あぁ…結局「ワタシ」は一歩を踏み出せないんだって気付く。 ……うん、それでいい。 いつか「コノ世」と別れる日が来るまで、それでいいや。
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