取り戻した日常、取り除かれた異常

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その後、ことが終わって私が聞いた話を話そうと思う。 私を襲った犯人……山谷 明夫 は補導され、間もなく少年院に送られた。 彼は精神に病を抱えていたようだ。理由は幼馴染みの死である。 彼には 木下 遥 という幼馴染みがいたそうだ。彼は彼女を愛していた。 しかし、彼女は三か月前に死んでしまった。 彼の精神に異常が現れたのはそれからだという。 いつもどこに行くにも女の子の人形を連れて行き、それを遥と呼び、声をかけていたという。 家では毎晩のように部屋からひとりで、まるで誰かと話しているような声が聞こえてきた。 そのため彼の両親は、何度も精神科医と相談をしていたそうだ。 また、朝の登校時、帰宅時、夜の遅い時間も人形を手に持ってひとりで喋りながら歩いている姿を近所の住人は見ていたという。 幼馴染みの死…… それが彼の精神を狂わした。 しかし、そうとも言い切れない。 幼馴染みの死因は何者かによる殺傷だったのだ。後日、彼が持っていたナイフと彼女に傷をつけた凶器が同一のものであると判明した。 警察は、恐らく彼の告白を彼女が拒んだために逆上した彼に殺されたのだろうとみている。
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