動きだす日常

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それぞれが話したいことを話し終えると、僕の部屋は静寂に包まれた。その暖かな静寂の中で僕と遥は見つめ合う。 先に笑いだしたのは、遥だった。それを追いかけるように僕の口からも笑い声が漏れた。 「そろそろ帰らなきゃ」 遥が時計を見て、言った。 「送っていこうか?」 「じゃあ、お願いしようかな」 遥はそう言って、微笑んだ。 部屋をでて、階下に行くと、父と母がテレビを見ていた。 「遥を送ってくる」 ちらりとこちらを見た母に遥は会釈をする。母はすぐにテレビに視線を戻し、頷いた。 「いってらっしゃい」 僕と遥は幼稚園からの付き合いで、高校生となった今は恋人の関係だ。お互い家が近いため、親も公認といったもの。 まぁ、恋人となったのはついこの間の、遥の誕生日のことで、僕は未だにあの日の自分の告白の言葉を思いだすと、恥ずかしくて悶えてしまうから思いださないようにしている。 しばらく、涼しい夜風を感じながら、ふたりそろって歩を進めた。 「ここでいいよ。家ももう近いから」 「わかった。それじゃあ……」 遥の姿はやがて先の暗闇に消えていく。 別れる時の寂しさは、時々苦しみを与えたりする。 ゆっくりと、僕は手に持ってきたものを鞄に詰めて帰った。 同じ高校だから僕と遥が付き合っていることは内緒にしていて、僕の友達は誰も知らない。遥は親しい友達に話したかもしれないけど。 だから僕はその後すぐ帰路で高校の友達である寺脇君と出くわした時、遥が隣りにいなくてよかったと息をはいたのだった。
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