取り戻した日常、取り除かれた異常

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ふと、物思いにふけって歩いていた私は、気がつくと、目当ての部屋のドアの前に立っていた。 ドア横のプレートには 寺脇 健人 の文字。ノックすると健人の声がドアの奥から聞こえた。 ドアを開けると、白を基調とした簡素な病室、そして、ベッドの上に肩に包帯をまいた健人がいた。 「肩は大丈夫……?」 ベッドの横の椅子に座りながら私は健人に聞いた。 「まだ少し痛いかな……」 健人は微笑んだ。 健人は肩以外にも後頭部を怪我していた。あの日の放課後、私のもとに彼……犯人が来る前に体育倉庫に呼び出され、殴られ気絶させられていたのだ。なんとか起き上がって私と彼を捜しまわっていると、運良く私達を見つけ、間に飛び込んだということだ。 「ごめんね……私のせいで……」 「京子のせいなんかじゃないよ。京子は悪くない。……それに僕は約束したろ……」 健人は笑う。 「『京子をずっと守る』って……。京子からの初めてのお願い……叶えれたね。これからもずっと守っていくから」 健人は笑ってそう言い、包帯を巻いていないほうの腕をあげ、私の頭を撫でた。 私はずっと健人と一緒にいたい。 そう強く思った。 《END》
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