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六時間目終了を告げるチャイムが鳴るやいなや、僕は鞄を手に教室を飛び出した。
「お~い!山谷君」
呼ばれて振り替えると、クラスメイトの寺脇君が僕のほうに歩いてきた。
「お前、暇?宿題写させてくれない?」
「ごめん……先約が……」
その先約とはもちろん遥のことである。
「そっか……彼女か?」
少しドキッとしたけど、これは寺脇君の冗談だろう。いわゆるかまかけだ。
「なわけないだろー」
「……あはは、じゃあまた」
寺脇君の表情が少し曇ったような気がしたが、すぐに僕はそんなことを忘れて走り出した。
校門を抜けながら、僕は鞄から取り出す。
待ち合わせ場所には既に遥がいた。
「ごめん。待った?」
「ううん。今来たとこ。帰ろっ」
そう言って遥は僕の手をとる。ほんとに理想の彼女だった。遥は僕の理想を全て満たしている。
帰り道、遥がふと話題を変える。
「あのさ……私のお願いの話だけど……」
「わかってる。任せて」
遥は力弱く笑う。
きっと遥は京子って子にひどい目にあわされてるんだ。遥は僕を頼ってくれた。
僕はそれに応えなければ。
「家に寄ってく?」
「うんっ!」
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