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それは、微かな鳴き声だった。
蚊が鳴くよりも更に微かで、消え入りそうな呼び声。
佐倉は立ち上がり、辺りを見回した。
草むらの中にはなにもいない。
水辺にも魚以外の影は見当たらなかった。
まさか魚が話すわけでもないし…。
諦めて再び腰を下ろした佐倉の目の前。
川の真ん中にある橋のらんかんに、段ボールが引っ掛かっていた。
段ボールは半分沈みそうになりながら、橋に引っ掛かっている。
いつもなら気にも止めないただのゴミだが、蓋に施された厳重すぎるガムテープと、それを引っ掻いてこじあけた痕跡。
その痕跡があきらかに、小さないきものによるものだということに、違和感を感じた。
「……おい!そこにいるのか?」
たかが動物が、返事をする訳がないとわかっていながら、思わず声をかけていた。
返事の代わりに、なにかが身動ぎをした。その反動で段ボールが沈んだ瞬間。
佐倉は服のまま、川に飛び込んでいた。
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