救出劇

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一人ぼっちで死ぬんやと思っていた。 僕はこのまま川に沈んで、死んでしまうんやと。 それでもいいな、もう疲れてもうた。 死ぬことを受け入れてしまえばもう何も怖くない。 染みだしてきた冷たい水も気にならない。 「…おい!」 それは強くて優しい声やった。 僕に呼び掛けた声やった。 死ぬことが急に怖くなって、冷えきってしまった手足や尻尾をばたつかせた。 そしたら、段ボールが沈んで…僕の遥か頭上。水の蓋が閉ざされた。 息が出来ない。 怖い、助けて。 死にたくない。 死にたくない! 僕は意識を手放した。
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