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流れに翻弄される段ボールの中で、兄弟はヘリに手をかけて必死に岸を掴もうとしていた。
僕は段ボールがひっくり返ったりしないように、反対側にしっかり座り込んで兄弟を見上げていた。
尻尾が、水につかる。
段ボールだっていつまでも流れてるわけじゃないんだ。
「飛び、うつれるかな…」
「危ないで、おちたら…!」
兄弟はヘリから身を乗りだして岸を睨み付ける。
岸は遠くなったり近くなったり、僕らに意地悪をしているみたいだ。
河辺を散歩するひとたちも僕らから目をそらした。
「たすけて、たすけて!」
「無駄だよ。聞こえても理解できないよ。ぼくらまだ、ヒトガタには成れないんだ」
せめてヒトガタになれたら、人間と話せるのに。たすけてって言えるのに。
にゃあにゃあ泣きわめく僕らに、手を差し伸べるやつなんかいなかった。
「なんで…たすけてくれへんの…」
「自分で助かるしかないんだよ」
兄弟がいっそう大きくヘリから身を乗りだした。
そのとき。
段ボールが、風に煽られ大きく揺れた。
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