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大きく揺れた段ボール。
兄弟が、ふりおとされかけながら必死にしがみついている。
僕は助けようと立ち上がった。
「バカ、来るな!お前まで落ちるだろ!」
「せやけどっ…」
兄弟は、僕がその手を掴む前に、壁を蹴ってジャンプした。
しなやかな体つきで、放物線を描いて飛ぶ体。
兄弟の体が、見えなくなる。
きっと、川に沈んでしまったんだ。
「おれは大丈夫だから!お前もちゃんと生き延びろ!絶対また、会うんだからな!」
兄弟の声がだんだん聞こえなくなっていく。
段ボールから身を乗りだして探しても、兄弟の姿は見つからない。
僕だけが、流れていく。
僕は、脱力して座り込んだ。
そして、力の限り泣き叫んだ。
夜がきて、泣きつかれて眠ってしまうまで。
眠ってしまおう。きっと眠ってるうちに死ねるんだから。
もう生きていく気力すらない。僕は一人では何も出来ない。兄弟を助けることも出来なかったんだ。
…僕はこの世界に、たった一人になってしまった。
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