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「…お前…あまり高校は選べないぞ」
「……なんで?…」
「授業に出ていないからだ」
「………どこなら、行ける?…」
頭がいい事だけが取り柄の俺。
無口で無愛想で口悪い上にサボり魔。
簡単な授業ばかりで、出る気など起きない。
お陰でダチなど居ない。
単位ギリギリでしか出なかった俺の受験は周りからだいぶ遅れを取った。
やっと二次募集で見付けた学校。
やりてぇ事があったわけでもない俺は詳しく学校の説明を聞く事なく、「そこでいい」と教師に一言言い進路指導室をあとにした。
こんな選択ではいけなかったと気付くのはだいぶ後の話。
俺は受験に備え、勉強する事もなく当日、試験会場に行き一発合格。
担任はその格好で受かったのは奇跡だと言っていた。
金に染め上げた長めのウルフカットの髪にバツバツと沢山開け、大量に付いている耳のピアス。腰でだらしなく履いたズボンに第三まで開けたYシャツと羽織っているだけの学ラン。
鞄も持たず手ぶらでそんな格好で行けば浮いたのは言うまでもない。
合否がわかり一応報告に行った俺に担任が言うのは当たり前だろう。
……まぁ、気にしてねぇけど。
それでも笑顔で「おめでとう」と頭を撫でた担任の手は温かくて、その笑顔は自分の事のように嬉しそうな顔で、ちょっぴり嬉しくなったのは誰にも言わない。
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