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しばらく歩くと、木々や蔦でドーム状のものが造られていて、そこには光が一切差し込まないようになっており、物音すらの何一つの動きのない空間があった。
壱夏はその少し前で立ち止まり、大きなそれを見上げた。 ユリアも遅れて追いつき、その中を見透かすように、先程と変わらない笑顔で見つめた。
「これが魔物の巣? ……ちょっと大きいね。 強くはなさそうだったのに」
ユリアは不思議そうに指を顎にあて、壱夏の方を向く。
「群れてるからな。 働き手も多いんだろ。 それにこの辺りには他の魔物の種はないみたいだしな……住みやすいんだろう」
そう言うと、壱夏は右手を高く掲げた。
「怒りの剣……!」
すると、掌から炎が渦を巻き、龍のように揺らめき昇り、やがて先ほどの紅い刀が出現した。 すでに強い炎を纏っており、熱気で周囲の草木が枯れて、それはまるで聖剣が生命を食らいつくしているかのようにも見える光景だった。
「離れてろ……」
壱夏はユリアを退けさせ、刀を大きく振りかぶった。
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