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すると、耳を塞ぎたくなるような轟音とともに、壱夏の目の前の木々が粉砕し、「何か」が現れた。
その「何か」は、蜘蛛を熊ほどの大きさにし、頭のほとんどが口になったような、異端、化け物そのものだった。 脚や口もとから覗く牙には、人間の血や肉の残り粕のようなものがこびりついていて、汚らわしく、汚らしい、生ゴミのような臭いがたちこめていた
どうやらそれが、壱夏の言う「魔物」らしい。
「道案内のお出ましか……」
しかし壱夏は、そんな化け物が目の前に現れたというのに、余裕の表情で口の端を吊り上げ、右手を掲げた。
「怒りの剣……!」
ゴォ……!
壱夏の掛け声とともに、掲げた手はゆらゆらと燃える炎に包まれ、その中から何かを掴み、引き抜いた。
瞬間、炎は唸り声とともに四散し、棒状の、長い、赤いものが姿を露わにする。
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