1~暁~

3/18
前へ
/383ページ
次へ
すると、耳を塞ぎたくなるような轟音とともに、壱夏の目の前の木々が粉砕し、「何か」が現れた。 その「何か」は、蜘蛛を熊ほどの大きさにし、頭のほとんどが口になったような、異端、化け物そのものだった。 脚や口もとから覗く牙には、人間の血や肉の残り粕のようなものがこびりついていて、汚らわしく、汚らしい、生ゴミのような臭いがたちこめていた どうやらそれが、壱夏の言う「魔物」らしい。 「道案内のお出ましか……」 しかし壱夏は、そんな化け物が目の前に現れたというのに、余裕の表情で口の端を吊り上げ、右手を掲げた。 「怒りの剣……!」 ゴォ……! 壱夏の掛け声とともに、掲げた手はゆらゆらと燃える炎に包まれ、その中から何かを掴み、引き抜いた。 瞬間、炎は唸り声とともに四散し、棒状の、長い、赤いものが姿を露わにする。
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

736人が本棚に入れています
本棚に追加