736人が本棚に入れています
本棚に追加
「慣れてるからなんとも……痛い。 いや、それよりお前は何だ?」
……おかしい。 全く気配を感じられなかった……。 それに、確かにあっちから声が聞こえた筈だ……なのに……。 俺が振り向く前に、移動した? だとしたら何て速さなんだこいつ……。
壱夏はなるべく平静を保っているが、内心ではかなり、焦っていた。 これでも戦いに自信があるというのに、易々と、笑いながら、それも年下の少女に、後ろをとられたからだ。 だが当の少女はそんなことは気にせず、可愛らしい笑みをつくってみせる。
「私は、ユリア。 旅人だよ。 壱夏くん」
「!? 何故、俺の名を……!?」
「え? いやコートの内側に書いてあったよ? それ名前でしょ?」
あどけない顔で壱夏の黒いコートを指差す。 壱夏が動いてそれが翻る度に、赤い文字が覗くのだ。
「あ、あぁ、そうか」
「それよりさ……その刀」
ユリアはフッと真面目な顔をし、壱夏の構えている紅い刀を指差す。
「それってさ、聖剣でしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!