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「いや、こっちの話です。どうぞ、お話続けて下さい。」
「…たまに意味不明だよね、愛音って。渓汰は置いとくとして、ただ単に私は永遠が羨ましかったのよ。」
《永遠が…羨ましい?》
私は、その言葉の意味を汲み取れず、首を傾げた。
「どういう事ですか?」
「私も永遠も幼い頃から、背負いたくもない"家柄"が付き纏って、自由に生きる事が許されなかった。
大体、ピアノだって、自分が好きで始めたんじゃないのよ?子供の頃から、英才教育され続ければ、嫌でも上手くなるわ。」
私は、黙って胡桃さんの話しに耳を傾けていた。
誰もが彼女のピアノの腕前を、"才能"という言葉で称しているけれど…
彼女は一体、どれ程の努力をして来たのだろうか?
「他に、やりたい事だって沢山あるの。こうして、普通の女子大生らしく、バイトや買い物だってしたい。だけど、"天才ピアニスト"や"お嬢様"という肩書きが、何もかも邪魔するの。」
端から見れば、贅沢な悩みだけど、彼女達にとっては縛られる苦痛でしかないのかもしれない。
「それでも永遠は、"こっちの世界"で、大学生を満喫する事を許された。バイトをして、そのバイト先で自分を想ってくれる先輩や彼女に出会えたでしょ?」
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