第1章 須屋 進

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「狙いなんかないわよ。気分転換になるでしょ?さ、起きた起きた!」 葉子は半ば強引に進の布団を奪い、タンスから洋服を出し始めた。 「さっさと着替えて!ご飯はコンビニで買いましょ。私は下降りてるからね」 それだけ早口で言うと進の意見も聞かず葉子はさっさと下に降りて行った。 「はぁ」 深い溜め息をつき進は身を起こした。仕方ないので服を着替え始める。葉子が用意したシャツとジーパンに着替えて進はしばらくぼーっとしながら自分の部屋を見渡していた。壁の隅には小さく刻まれた自分の身長記録が書かれている。170で止まってしまってからは1センチすら伸びなかったのだが。顔は良くも悪くもない。ただ人よりぼーっとした顔とは言われる。まぁこれと言って大それた特徴は進にはなかった。 進に家族はいない。二年前の事故で進以外は全員死んでしまった。 しかし引き取ってくれる親戚もおらず生前両親同士が親しかった葉子の親に面倒を見てもらう事になった。意外と裕福だった葉子の家庭は進の家だけはそのままにしてお金の面だけ面倒を見ている。
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