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王都近くの光のあまり差し込まぬ薄暗い森。
鬱蒼と茂る中対峙する一つ目の一角巨人と、先端から柄まで漆黒の刀を握る、左胸に銀の鎌の装飾の付いた黒いコートを着た青年。
「第一解放……」
静かに青年が言い放つと、その体を黒い波動が纏い、黒髪が緩やかに波打つ。
その存在感に恐れをなしたのか、対峙していた巨人が雄叫びをあげながら拳を繰り出す。
「闇雷波っ!」
その事に焦る様子もなく、刀を体の前に出して唱える。
すると、黒い雷が刀から疾り、巨人の体に激しい痺れと熱を与える。
残ったのは焼け焦げた臭いを放つ黒い巨人の死体だけ。
青年は、その頭から角を切り取ると、腰の巾着にしまう。
「これで……五体目。俺の仕事終了!後は……」
「クロード~!」
少し右を見れば、真っ赤な長い髪の美しい少女。
同じ様に鎌の装飾の付いた黒の上着にニーソックス、白のミニスカートを揺らして笑顔でこちらに向かってくる。
「ちょうど良かったミア。今、終わった所だよ」
後ろを指差して穏やかに笑う。
幼さは残るものの、背は伸び、表情は些か鋭さが増していた。
「うん、二人で十体。これで任務完了だな。
さぁ、ご飯でも食べて帰ろう。実はお腹が減って仕方がないんだ」
一方のミアは相変わらず、髪は少し伸びたが、その他に外見的変化は特に見当たらなかった。
「そうだね。ここら辺は畜産が有名だから、美味しい肉が食べられるかもね」
「肉!いいじゃないか!是非食べに行こう」
「まぁ、あんまり遊んでるとエスナに遅いって叱られるから、程々にね」
鼻歌混じりに頷くミアを見て、溜め息を一つつくと穏やかな笑みを浮かべてその横を歩く。
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