エピローグ

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「じゃあ…もしかして。」 おれは静かにニャン美を見た。 ニャン美もおぼつかない瞳でおれを見ていた。 一瞬 時が止まったかのように思えた。 おれにはその一瞬が6時間ぐらいに思えた。 「くそ…くそ…。だめだ思い出せない。」 おれは自分を憎んだ。切り取られた記憶が戻ってこない。 ニャン美は泣き出しそうな表情でおれの手を握った。 「タカシ。これ。」 そう言ってニャン美が差し出したのは、煮干しだった。 ズキン それを見た瞬間、おれの体が疼いた。 (なんだ?なんなんだ?この気持ち…。) 「何十年、何百年経っても、あたしの気持ちわ…煮干しみたいに変わらないょ。」 ニャン美は静かにそう言った。 ………… ズキーン おれの目に自然と涙が溢れてきた。 そうだ……その煮干し…この公園…この匂い…この夕焼け…そしてこの…セリフ。 おれはニャン美の目をじっと見つめた。 「……タマコ。」 ──完──
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!