第5章 第一の殺人

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小町「あ・・、ここです これ、見てくださいよ・・」 小町ちゃんは勝ち誇ったように、 『これ』に向かって指をさす・・ う、吐きそう・・! 何人かが 走って その場から離れ、また戻ってくる・・ かつてドラキュラ・勝之であったはずのその肉体は、 ゴロリと 捨てられたマネキンのように 沼のほとりに転がっていた。 目をかっと見開き 恐怖と苦痛に歪んだままの表情は ピクリとも動かずに かつて私に話しかけてきた笑顔のかけらも無かった・・ 素人判断で何ヵ所かにナイフのようなもので切り口や刺し傷のようなものが見えたが この寒さの中、まさしく血も凍ったのか、 思ったほど 血は出ていないようだった。 ただ真っ白な雪の上に、その身を横たえているだけであった・・ 実は私はまだ、暖かいベッドの中にいるんじゃないか? それなら、誰かこの悪夢から覚まして欲しい・・ ジョーズ「これは、本物の人の死体やな・・」 理子「まさか・・雪じょうろの呪い!?」 夏子「雪じょろう」 私がこの恐ろしく日常から外れた 現実を受け止めるため、 混乱した頭を整理していると 小町ちゃんが、奇妙な行動をとった・・ それは、この場にいた誰もが驚きを隠せないでいた。 由香「小町ちゃん、 アナタ・・何やってるの!?」 小町ちゃんは一生懸命、死体の周りの雪をかき分けていた・・ 何やってんだ?コイツ。 気が狂ったのだろうか。 いや、それとも 私の方が気でも触れて 幻覚でも 見ているのだろうか? 夏子「凶器でも探してるんですか?」 小町「それもありますけどね・・」 夏子「そうですか。 まあ、がんばって下さいね」 小町「はい・・」 この場に似つかわしくない、二人の冷静な会話が交わされる。 小町ちゃんは一度、死体を見ているので、わからなくもないが、 夏子さんの落ち着きようは異様ともいえた。 まさか、夏子さんが・・? いやいや、そんなはずはない。 私は疑心暗鬼に陥っていた・・ 小町「もう、戻りませんか?」 半ば放心状態の私達に 彼女は寒そうに言った。
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